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JR只見線復旧後の利活用プラン【私案】

JR東日本が今月15日、2011(平成23)年7月に発生した新潟・福島豪雨によって不通区間となっている只見線の会津川口-只見駅間について、6月から復旧工事に着手することを発表しました。いよいよ6月15日に起工式が行われ、完成は2021年度の予定です。
さて、この復旧工事には約81億円が必要とされており、2/3の約54億円を県と会津地方17市町村、残り1/3の約27億円をJR東日本が負担します。
復旧後は、福島県が線路や駅舎などの鉄道施設を保有およびその維持管理を行い、JR東日本が車両運行を担う「上下分離方式」が採用されます。そして、その維持費が年間約2億1,000万円と試算されており、福島県が2/3、市町村が1/3を負担します。
参考までに、各沿線市町村で支出する予定の維持費は以下の通り。

会津若松市 約924万円
只見町 約1,935万円
金山町 約1,303万円
三島町 約425万円
柳津町 約456万円
会津坂下町 約476万円

福島県も1億4,000万円ほど負担する予定です。
当然、全線復旧後はあらゆる利活用を図り、次世代に負担を強いることのないよう対策を図らねばなりません。

最近、国鉄改革に携わりJR九州の初代社長、会長を務めた石井幸孝氏が著した本を手にしました。
石井氏は、国鉄民営化で分割されたJR九州の舵取りを任されたものの、人口密度が低いため「鉄道事業単独では永遠に赤字」という九州地方の構造的な課題に対し、事業の多角化を図って経営を軌道に乗せた人物です。

JR只見線も人口の少ない地域を走る鉄道のため、このままでは「永遠に赤字」を脱却できない路線となります。
では、どう解消すればよいのか?
もちろん元々の潜在能力を活かして観光路線として誘客を図ることも一つですが、これだけでは不十分です。
そこで、石井氏の著書にそのヒントを見つけました。

「旅客専業から物流兼業への事業転換」

JR只見線が走る奥会津只見町と南会津町南郷地区は、「南郷トマト」という地域ブランド品を有しています。
南郷トマトは、7月から11月初旬まで収穫され全国各地へ出荷されます。
これを仮に、JR只見線を活用して輸送してはどうでしょうか?
現在の車両から座席を取り払って冷房を効かせれば保冷車両になります。

2016年、東京メトロと東武鉄道がヤマト運輸などの大手物流会社と共に「モーダルシフト」と呼ばれる、旅客車両を使った鉄道貨物輸送の実証実験を行いました。
2017年には新潟の北越急行が佐川急便と組んで宅配便の鉄道輸送を開始、北海道でも大手ビール4社とJR貨物、日本通運がモーダルシフトによる輸送を始めました。
さらに、今年2月にはヤマト運輸のコンテナを旅客車両に載せる「貨客混載」を和歌山電鉄が取り組みだしています。

慢性化しているドライバー不足でトラック協会が悲鳴を上げる今、物流輸送の鉄道回帰はもう始まっています。

さらに、現在黒字のJR東日本、JR東海、JR西日本の三社も、人口減少に伴う収益悪化が想定されているなか、2015年の国土交通省主催「ローカルボーン地域づくり・まちづくり研究会」の場で石井氏が新幹線物流を発表したところ、JR各社や関係者も関心を寄せコンテナ新幹線などを検討しているようです。

こうした流れを先取りして、復旧前の今のうちにJR只見線で人と物を運ぶ「貨客混載」化を関係者に提案したいと考えています。
もちろん、南郷トマトの輸送だけではまだ足りません。
そこで次のステップとして、さらにもう一つの提案となるのが奥会津地域の雇用対策につながる一挙両得案です。
こちらは事業性評価調査が必要となりますが、電力需要の少ない夜間電力で水素を製造する工場を田子倉ダムや奥只見ダムの発電所に併設して、JR只見線で燃料電池を輸送するというのはどうでしょう。
こちらも関係者と話を交わして、ぜひ検証していきたいと考えています。

<2018.06.26追記>
いずれ新幹線物流が始まれば、只見~小出~上越新幹線で首都圏へ最短3時間半で輸送可能です。

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